利己的とは、自分の利益だけを追求しようとするさまを意味し、「りこてき」と読みます。職場で「利己的な判断」と聞いて、意見を言ったり依頼を断ったりすることまで悪いのかと迷うかもしれません。しかし、自分が利益を得る行動すべてを利己的と呼ぶのは、意味を広く取りすぎています。
言葉の核になるのは「自分の利益だけ」という点です。他者の立場や負担を考えているかも、使う場面を理解する手掛かりになります。自己中心的、わがままなどと意味は重なりますが、互いにまったく別の性格分類ではありません。一度の行動から相手の本質を決める言葉として使うのも慎重にしたいところです。
辞書の意味から日常の例文、似た言葉や利他的との違い、自分を大切にする行動との関係までを整理します。最後に、相手を決めつけず負担や希望を伝える言い換えも紹介するので、発言の意味を理解し、自分の場面に合う表現を選べます。
利己的とは自分の利益だけを追求しようとするさま
読み方と辞書の定義
「利己的」の読み方は「りこてき」です。コトバンク掲載のデジタル大辞泉では、自分の利益だけを追求しようとする様子として説明されています。精選版日本国語大辞典の説明には、他人の立場を考えず行動する面も示されています。
利益には金銭だけでなく、時間や労力、評価などの得になることも考えられます。たとえば、共同作業で自分の評価だけを上げるために、ほかの人へ負担を押し付ける場面なら、利己的という言葉の意味を理解しやすくなります。
一方、成果に見合う評価を求めることや、自分の時間を守ることだけで利己的と決まるわけではありません。「自分に得がある」ことと「自分の得だけを考える」ことを分けて読むと、発言の意図を取り違えにくくなります。
「利己的な」「利己的に」の用法
利己的は形容動詞で、「利己的な判断」「利己的に振る舞う」などの形で使います。「な」は判断や行動などを説明し、「に」は振る舞い方などを説明する形です。人全体を指す「利己的な人」という言い方もありますが、会話では具体的な判断や行動に焦点を当てたほうが問題点を説明しやすくなります。
利己的の使い方を例文で確認
以下は意味を理解するために作成した例文です。辞書や第三者の発言の転載ではありません。何が自分の利益だけを追うことに当たるか、状況と合わせて見てください。
仕事や共同作業の例
- 成果は自分だけのものとし、失敗は仲間の責任にするのは利己的な振る舞いだ。
- 自分が早く帰るために、相談なく担当作業を同僚へ渡すのは利己的な判断だ。
- 共有の予算を自分の担当だけに使おうとする、利己的な提案だった。
一つ目は評価や責任、二つ目は時間や労力、三つ目は共同の資源が関わる例です。自分の都合による行動の結果として、ほかの人の立場や負担が置き去りになっています。ただし実際の場面では、担当の合意や事情があるかも確認する必要があります。
日常生活や人間関係の例
- 旅行の行き先を、自分の希望だけで決めようとするのは利己的だ。
- 共有する場所を独占し、ほかの人が使えないことを気にしない態度は利己的に見える。
- 自分が困ったときだけ助けを求め、相手の事情には耳を貸さないのは利己的な対応だ。
希望を伝えること自体が問題なのではなく、他者の希望や利用機会を考えずに進める点を表しています。「そう見える」と「本人の動機がそうだった」は同じではありません。例文を覚えるときも、外から分かる行動と内心の推測を混ぜないようにしましょう。
自己中心的・わがまま・利他的との違い
近い言葉は意味が重なる
自己中心的、わがまま、自分勝手は利己的と近い場面で使われます。日常の説明では、利己的は自分の利益、自己中心的は自分を基準にした考え、わがままは自分の希望を通そうとする面に注目すると整理しやすくなります。
次の表は言葉を選ぶための目安です。人を重ならない種類へ分類する診断表ではなく、同じ行動を複数の言葉で表せる場合もあります。
| 言葉 | 注目する点の目安 | 状況の例 |
|---|---|---|
| 利己的 | 自分の利益だけを追う | 評価だけ得て負担を他者へ回す |
| 自己中心的 | 自分の見方を中心に考える | 自分に便利なら皆にも便利と思い込む |
| わがまま | 自分の希望を通そうとする | 相談せず希望する予定へ変えようとする |
| 利他的 | 他者の利益へ目を向ける | 相手に役立つことを考えて行動する |
利他的は他者の利益へ目を向ける語
利他的は、利己的と対照的に他者の利益を考える方向の言葉です。ただし「自分に少しでも得があれば利他的ではない」と厳密に線を引く必要はありません。人の行動には複数の目的が含まれることもあります。言葉の意味を理解することと、その人の行動を善悪に二分することは分けて考えましょう。
自分を大切にする行動はすべて利己的?
無理な依頼を断る場合
自分の体調や予定を守るために依頼を断ることが、自動的に利己的になるわけではありません。これは辞書の定義を日常の場面へ当てはめた整理です。自己尊重を測る心理検査や、相手との関係を診断する基準ではありません。
たとえば「今日はすでに締切のある作業があるため引き受けられません。明日の午後なら対応できます」という断り方は、自分の条件と可能な範囲を伝える例です。相手の依頼をそのまま受けなくても、事情を共有して調整しようとしています。
対して、自分が楽をしたいという理由だけで決まっていた担当を放置し、周囲へ無言で任せるなら、他者への負担を考えない面が問題になります。同じ「断る」に見えても、合意や役割、事情が異なるため、一つの行動だけでは判断できません。
利益と負担を共有して相談する場合
意見を言うときは、自分の希望に加えて、周囲への影響も言葉にしてみましょう。「この方法なら私は早く終わりますが、確認作業が増えるので、分担を相談したいです」のような伝え方です。希望を隠す必要はなく、利益と負担を一緒に検討する姿勢が話し合いにつながります。
人に伝えるときの言い換えとよくある疑問
「利己的」と直接言う前に行動を具体化
「あなたは利己的だ」と言うと、人全体への非難に聞こえ、何を変えればよいかが伝わりにくくなります。行動、困っていること、頼みたいことを分けて伝える方法があります。以下は会話のための自作例です。
「担当の変更を直前に知り、こちらの作業が増えています。次からは変更前に相談してもらえますか」。こう伝えれば、相手の性格を決めずに、負担と希望を示せます。問題が起きた日時や合意していた役割も、分かる範囲で具体化すると話題を絞れます。
一度の行動で性格を決めつけない
利己的に見える行動があっても、本人の事情や認識違いがあるかもしれません。性格の原因を幼少期や病気だと推定したり、精神疾患の名前と結び付けたりしないでください。言葉の意味の理解だけで、相手の内面を確定することはできません。
利益と他者への影響を見る
「利己的」と感じたときは、誰にどんな利益があり、誰の負担が見落とされているかを確認してみましょう。自分を大切にすることまで否定せず、具体的な行動を基に話し合うと、意味の理解を日常の言葉選びに生かせます。


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